会長 挨拶


(今村 祐嗣 京都大学名誉教授)

 

 


 木質炭化学会は、植物資源の熱分解による有効利用を念頭におき、熱分解機構、熱分解生成物の特性と用途開発に関する諸問題などを討議することを目的として、2002年に設立されました。具体的は、木材から木炭や木酢液が生成してくる仕組みの解明、生成された木炭や木酢液の性質や機能を明らかにすること、それらの新たな用途の開発、等々ということですが、原料は木材(木質)だけでなく、竹、その他の植物、農業廃棄物、生ゴミ、林産廃棄物なども含めた広範なバイオマス資源を対象とし、また、炭化に限らず、幅広い熱分解も研究範囲に包含しています。

 学会設立以来の10年余りの木質炭化に関わる状況の変化を振り返ってみたいと思います。今から10年前の21世紀初頭では、いわゆる木炭の燃料用途以外の機能が新たに注目され、木炭による水質や空気質の浄化や木酢液のはたらきが取り上げられ、科学的な解析や現場での利用が積極的に行われるようになりました。また、電子顕微鏡による木炭のナノ構造の観察が試みられ、今までわれわれが眼にしたことの無い顕微の世界が示されたのもこの頃からでした。さらに、木炭の電磁気的な新機能が研究され、カーボン新素材としての検討も行われるようになりました。

 こういった状況は現在に至っても続いていますが、最近は、木炭の炭素固定効果など木質バイオマスの地球環境保全という観点から木炭への注目度も一層高まり、また、エネルギー源としての役割も見直されようとしています。この背景には、木材の利用促進が地球温暖化防止に資するということが社会で認識されてきたことがあるといえます。もちろん、われわれの生活に密着した木炭や木酢液の用途に対する科学的な解析はもちろん、新用途に向けての展開も行われつつあります。

 当学会の会員層は、国内外の熱分解関連研究者、製炭者、流通業者、学生、団体等、幅広い層を対象としていることが特徴です。気軽にご入会いただき、いろいろな立場からのご意見をいただければ幸いです。単に基礎データの集積に終始して理論だけが空転するのではなく、実際の製炭現場、流通業界等の意見も取り入れ、現場で役立つデータの構築にも精力的に取り組み、研究と現場や業界が一緒になって歩む学会を目指しています。

 当学会の活動が、熱分解関連研究の情報発信源として役立ち、ひいてはバイオマス資源の効率的利用に資することを願っています。

2013年6月